本講義の画面はClash Verge Rev(Windows / macOS)を基準にしている。Clash Plus、FlClash、Android版を使う読者もページを変える必要はない。4つのステップは完全に同じで、名称が少し異なるだけ——「サブスクリプション」は一部のクライアントで「プロファイル」や「Profiles」と表記され、「システムプロキシ」はAndroid版では「起動/実行」ボタンに相当する。差異がある箇所は本文中で随時補足する。まだクライアントを入れていない場合は、先にクライアントダウンロードページでお使いの環境に合うものを取得してから戻ってきてほしい。
事前準備:3つのものを揃えておく
手を動かす前に、以下の3点をチェックしておく。どれか1つでも欠けていると後の手順で必ず詰まり、しかもその詰まりをソフトの不具合だと誤解しやすい。
- インストール済みのクライアント。本サイトでは Clash Plus を第一推奨としているが、上級者には Clash Verge Rev もよく使われており、いずれもダウンロードページで環境別に用意している。Windows ユーザーは注意:Clash Verge Rev は WebView2 コンポーネントに依存しているため、インストール時に不足を指摘されたら案内に従って追加インストールする。
- サブスクリプションリンク1本。これは
https://で始まる長いURLで、契約しているサービス提供元のユーザーページに用意されており、通常「サブスクリプションをコピー」といったボタンがある。これはアカウントのパスワードでもノードそのものでもなく、定期的に更新される設定情報の取得先アドレスである。この概念は初見だと混同しやすいので、詳しい説明は用語集に用意した。今はユーザーページからボタンで丸ごとコピーし、手入力しないことだけ覚えておけばよい。 - 他のプロキシソフトを終了しておく。以前に別のプロキシツールを入れていた場合は先に終了する。2つのソフトが同じローカルポート(よくあるのは
7890)を奪い合うと、起動エラーや通信経路の混乱として表れ、原因調査に最も時間を取られる。
3つ揃ったら、次に進もう。
ステップ1:サブスクリプションリンクを導入する
まず設定をクライアントに取り込む。Clash Verge Rev を開き、左側サイドバーの「サブスクリプション」をクリックする(Clash Plus では「プロファイル」、FlClash ではホーム画面の「プロファイル」入口にある)。ページ上部に入力欄があり、その右に「インポート」ボタンが並んでいる。
- サブスクリンクをコピーする。サービス提供元のユーザーページに戻り、「サブスクリプションリンクをコピー」などのボタンを探してクリックする。ここは特に強調したい:必ずコピーボタンを使い、範囲選択して手動コピーしないこと。サブスクリンクの末尾には
token=のようなパラメータが付いていることが多く、1文字でも欠けると全体が無効になる上、エラー表示だけではリンクの欠損だとわからない。 - 貼り付けてインポートする。コピーしたリンクを入力欄に貼り付け、「インポート」をクリックする。クライアントは即座に設定データの取得を始め、通常数秒で完了する。成功の目印は明確で、下部に設定カードが表示され、設定名や更新日時、多くのサービス提供元では使用量まで表示される。
- この設定を選択状態にする。このカードをクリックして選択状態にする(カードの縁がハイライト表示される)。クライアントには複数の設定を保存できるが、同時に有効なのは選択中の1つだけ——導入したのに選択し忘れることが、初心者が「ノード一覧が空になる」原因の一つである。
この段階でエラーが出た場合は、まずエラーの種類を確認する。タイムアウトやネットワークエラーが出るなら、多くはサブスクリンク自体にアクセスするのにプロキシが必要なケースで、スマホのテザリングに切り替えて再試行すればすぐに確認できる。フォーマットエラーが出るなら、そのリンクが Clash 形式ではないことを示しており、サブスクリプション変換が必要になる。この話は長くなるため、対処法はトラブル対処のインストール・設定カテゴリにまとめてある。サブスクリンクをブラウザで直接開かないこと——返ってくるのはクライアントが読み込む設定データであり、人が読むためのページではないので、文字が乱れて見えてもリンクが壊れているわけではない。
ついでにやっておきたいこと:設定カード上の「更新」ボタンの位置を覚えておく。サービス提供元がノードを入れ替えると、既存の設定内のノードが順次使えなくなるので、その際はここで更新をクリックすればよく、再度インポートする必要はない。
ステップ2:プロキシモードを選択する
設定の導入が終わったら、次はどの通信をプロキシ経由にし、どれを直接接続にするかをクライアントに伝える。これがプロキシモードの役割である。Clash Verge Rev のホーム画面(または「プロキシ」ページ上部)にモード切替があり、全部で3種類ある。
- ルール(Rule)——設定ファイル内の
rulesに従って通信を1件ずつ照合する。ルールは上から順に評価され、一致した時点で処理を終える。中国本土のサイトは直接接続ルールに一致してそのまま通過し、海外サービスはプロキシルールに一致してノード経由になる。互いに干渉しない。 - グローバル(Global)——ルールを無視して、すべての通信を無条件でプロキシ経由にする。
- 直接接続(Direct)——すべての通信を無条件でプロキシを経由させない。一時的にオフにするのと同じ状態。
ここが要点なので明確にしておく:日常利用では「ルール」を選び、以後触らないこと。ルールモードこそが Clash のようなツールの核心的な価値だ——サイトごとに手動でプロキシを切り替える必要がなく、設定ファイルがあらかじめ振り分けを済ませている。グローバルモードを使う場面は2つだけ:特定サイトが振り分けの問題かどうかを一時的に確認したい時、あるいはマイナーなドメインがルールに含まれていない時。使い終わったら戻すこと。グローバルのままにしておくと、中国本土のサイトまで海外ノードを経由するため、逆に速度が落ちる。
「ルール」をクリックして選択状態にすれば、この手順は完了する。ルールの具体的な書き方や、DOMAIN-SUFFIX と GEOIP がそれぞれ何を制御しているかは調べ物として用語集のルール・振り分けカテゴリにまとめてある。各プロトコルやコアの違いを体系的に理解したい場合はプロトコル解説を参照してほしい。本講義ではここまで扱わない。
ステップ3:接続を有効化する
モードを選んだら、いよいよ通信を実際にクライアントへ流す。この手順でやることは2つ:システムプロキシをオンにし、ノードを選ぶこと。
- システムプロキシをオンにする。左側の「設定」ページを開き、「システムプロキシ」のスイッチをオンにする。この操作の内容は明確で、OSのプロキシ設定をクライアントが待ち受けているローカルポート(既定は
mixed-port: 7890)に向ける。以後、ブラウザや大半のシステムプロキシに対応したアプリの通信は、いったんクライアントを経由してから外へ出る。Android 版にはこのスイッチがなく、ホーム画面の大きな「起動」ボタンが同等の操作になる。macOS では初回オン時に権限確認のポップアップが出ることがあるので許可する。 - ノードを選択する。「プロキシ」ページに戻ると、1つ以上のポリシーグループが表示される——「ノードをまとめた引き出し」のようなもので、手動選択グループと自動速度測定グループがよく見られる。グループ名の右にある遅延テストボタン(雷アイコン)をクリックして数秒待つと、各ノードの後ろに遅延(ミリ秒)が表示される。値が低く安定しているノードを選ぶ。グループの種類が
url-test(自動測定)なら遅延を見て自動的にノードを切り替えるので、自分で選ばなくてもよい。一部のノードがタイムアウト表示になるのは通常のことで、全てタイムアウトする場合のみ問題である(対処法は文末を参照)。
この2点が終われば接続の準備は完了している。ここで混同しやすい点を1つ:システムプロキシは「システムプロキシ設定に従う」アプリのみに適用される。ブラウザはすべて対応しているが、ターミナルのコマンドライン、一部のゲームや古いソフトはこの設定を認識しない。こうした通信までまとめて処理したい場合は TUN モードを使う必要があり、ネットワーク層に仮想ネットワークカードを作って全通信を処理する仕組みで、権限やDNS設定が絡む上級者向けの話題である。仕組みの説明は用語集の動作モードカテゴリ、よくある問題はトラブル対処にまとめてある。本講義ではまずシステムプロキシで主要な流れを動かすことに絞る。
ステップ4:動作確認をする
最後のステップなので飛ばさないこと。「オンになっているように見える」と「実際に振り分けが機能している」は別の話で、確認には2分もかからず、後になって原因不明のトラブルに時間を取られるのを防げる。
- プロキシが通っているか確認する。ブラウザを開き、普段プロキシが必要なサイトにアクセスする。正常に表示されれば「サブスクリプション → ノード → システムプロキシ」の一連の経路が機能している証拠だ。開けなくても慌てず、「プロキシ」ページに戻って遅延が正常な別のノードに切り替えて再試行する——経路全体の障害より、単一ノードの障害の方がはるかに多い。
- 直接接続に影響がないか確認する。普段よく使う中国本土のサイトにいくつかアクセスし、表示速度が通常どおりか確認する。中国本土のサイトが明らかに遅くなっている場合は、モードが「グローバル」のままになっている可能性が高いので、ステップ2に戻って「ルール」に切り替える。
- 接続ログで振り分けを確認する。クライアント左側の「接続」ページを開くと、各通信の宛先ドメイン、一致したルール、使用しているプロキシ経路がリアルタイムに表示される。先ほどアクセスした2種類のサイトを再度更新し、ここで確認する——中国本土のサイトは
DIRECT、海外サイトは使用中のポリシーグループ名が表示されていれば、ルールによる振り分けが期待どおりに機能している証拠だ。このページは今後トラブルシューティングの最初の確認場所にもなるので、今のうちに見慣れておく価値がある。
3つとも一致していれば、この講義はここで終わりだ。設定は完了しており、日常的に行う操作は2つだけ——サブスクリプションの期限前後に「更新」を1回クリックすること、ノードが遅くなったら「プロキシ」ページで速度を測って切り替えること。他の設定は既定のままで問題なく、頻繁に調整する必要はない。
うまくいかない場合は症状別にこちらへ
チュートリアルの本編はここで終わりだ。どこかの手順で止まってしまった場合は、最初からやり直す前に症状に合わせて確認してほしい。
- 導入後にノード一覧が空になる——まず設定カードが選択状態になっているか、次にサブスクリプションの期限が切れていないかを確認する。それでも解決しない場合はトラブル対処のインストール・設定カテゴリを確認する。
- すべてのノードがタイムアウト表示になる——多くはノード自体の問題ではない。「サブスクリプションの有効性 → ローカル時刻 → ポートの競合」の順に確認するとよく、トラブル対処のトラブル対処カテゴリに一覧がある。
- スイッチはオンなのに通信がプロキシを経由しない——ブラウザとターミナルは別々の経路で、原因もそれぞれ異なる。確認手順はトラブル対処を参照。
- 用語がわからない——ポリシーグループ、TUN、GEOIP といった用語は用語集にカテゴリ別の説明があるので、確認してから戻ってきてほしい。
- プロトコルの選び方やコアの違いを知りたい——それは設定の問題ではなく選定の問題なので、プロトコル解説を通して読んでほしい。